日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2021年7月22日マスクをして話す際に注意すべきこととは?

昨年以来、マスクをしたままの生活が定着してきました。

しかし、このマスク、話をする上では少し注意が必要です。



 

先日、薬局に薬をもらいに行きました。

処方箋を窓口に出して待っていると、その薬局に別のお客様が来ました。

マスクをした係の人がその人が出した処方箋を受け取り、話しかけました。

「ご来局されたのは初めてでいらっしゃいますか」

私はそのことばを聞いた時、「ああ、このお客さん、聞き返すな」と思いました。

案の定、その人は係の人に「何ですって?」と聞き返していました。

こうした光景はよく目にしますが、話が聞き取れないのはかなりのストレスを感じてしまいます。

なので、今回はこの例を取り上げて、私たちが話をする際に注意すべきことを述べたいと思います。

 

私がこの係の人の話し方を聞いて、聞き返されるだろうと思った問題点は主に3つありました。

まず1つ目は、この係の人の声がとても小さかったことです。

近くにいた私もようやく聞き取れるほどの声でした。

今は誰でもマスクをしていますね。

マスクをしていると、自分では普通に話しているつもりでも、相手に届く声は小さくなってしまいます。

ですので、普段よりも意識して大きめの声で話す必要があります。

言われてみれば当たり前のことかも知れませんが、このことを意識して話をしている人はほとんどいません。

マスクをしている時は、普段よりも大きめの声で話しましょう。

 

2つ目は、この係の人の滑舌がよくなかったことです。

これもマスクをしていることに原因があります。

マスクをしていると声がこもって聞こえてしまいます。

なので、母音も子音も曖昧に聞こえてしまうのです。

私たちは、曖昧で聞き取りにくい話でも、多分こうだろうと推測しながら聞き取っています。

しかし、滑舌がよくない人がマスクをして話すと、推測できないほど発音が曖昧になってしまい、相手に聞き取ってもらえません。

特にマスクをしていると子音がぼやけますので、か行のK、さ行のS、た行のTなどの子音をかなり強調して発音するとよいでしょう。

以上、マスクをして話をする時は、大きめの声で、子音を強めに発音しましょう、ということを述べました。

 

3つ目は、聞き取りやすい言葉で話す、ということです。

これはマスクをしていることとは関係ない問題です。

「ご来局されたのは」ということばは、書かれたものなら意味はすぐにわかります。

しかし、普段私たちは「ご来局」などということばは耳にしないので、このことばで突然話しかけられると、とっさに漢字が思い浮かばず、何を言われたのかわかりません。

薬局の係の人にとって「ご来局」は馴染みのあることばなので、何気なく使っているのでしょう。

この場合は、「私どものご利用は初めてですか?」など、相手が聞き取りやすいことばで話しかけるべきです。

日本話し方センターの話し方教室では、「書きことば」ではなく「話しことば」を使いましょう、とお伝えしています。

「ご来局」は典型的な書きことばです。

私たちは、自分が馴染みのあることばを相手がわかるかどうか考えずに無意識に使ってしまいますので、注意が必要です。

 

以上、私がたまたま見た光景をもとにお話をしました。

ちょっとした心配りが、コミュニケーションをスムーズにします。

ぜひご留意ください。
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